「霧の盟約(The Covenant of the Veil)」

「霧の盟約、歴史を操る」

(サブリナの金塊、霧に消えた真実)

第一節 空白都市の中心

裏返された地図に刻まれた「空白都市」の中心には、常に一つの影が描かれていた。
――八角塔

その姿は、地上のどの建造物とも一致しなかった。塔の外壁は鉱石のように半透明で、内部に脈打つ光の線が走り、まるで星座図そのものを映し出す巨大な透視機のようだった。

塔は都市の核であり、同時に**「記録を編集する装置」**だった。

第二節 星型要塞との符合

空白都市全体の街路は、八角塔を中心に四方へと放射し、外周は五芒星に似た形を形成していた。
これは偶然ではなく、星座配置の投影だった。

都市の形は「オリオン」「北斗七星」「プレアデス」など特定の星々の組み合わせと一致し、時代によって都市の形状が変化する。
八角塔は、星々の動きを反映する**“星型要塞”の制御中枢**であったのだ。

霧の盟約の古文書にはこうある。

「星は塔を動かし、塔は記憶を編み直す。
天を写すことで地は改竄される。」

第三節 内部機構 ― 記録装置の正体

八角塔内部は階層構造を成し、各階に円環状の装置が並んでいた。
装置は水晶と金属の合成体で、内部には液体のように揺らぐ光が流れ、まるで時間そのものを循環させているように見えた。

中央には祭壇のような台座があり、そこに金塊を接合するための凹部が刻まれていた。
つまり――サブリナ号が沈めたNo.22金塊こそが、この装置を起動させる鍵であった。

第四節 黒き契約の再起動

No.22金塊の底面に刻まれた「逆向きの誓文」。
それは単なる呪文ではなく、塔の内部機構に起動信号を与える暗号だった。

逆向きの文字を光に晒すと、塔の水晶環が共振を始め、壁面の星座が動き出す。
やがて空白都市全体が脈動し、“歴史の再編集”が起こる瞬間が訪れる。

盟約はこの塔を使い、

  • 記録の削除
  • 歴史の置換
  • 真実の封印

を実行してきたのだ。

第五節 天空の都市の正体

塔の起動が完成したとき、空白都市そのものが「天空」に投影される。
それは現実の都市ではなく、**空に浮かぶ“記憶の都市”**だった。

人々はその姿を夜空の星座に重ねて見ていたが、それが単なる幻想ではなく「過去を書き換える編集室の反映」であることを知る者は、霧の盟約の一部に限られていた。

第六節 南極との結びつき

八角塔はなぜ南極と繋がっていたのか?
それは、氷壁の下が巨大な記録媒体そのものであるからだ。
塔の装置は、氷床と共鳴し、地球規模の記憶を再配置する役割を担っていた。

つまり、南極はただの氷の大地ではなく、
**「歴史を編集する都市を投影する鏡」**だったのである。

📘次回(第12話)予告
「鏡面の書庫 ― 氷壁の裏に眠る記憶の層」
八角塔の起動によって開かれた氷壁の“裏面”。
そこに広がっていたのは、世界のあらゆる出来事を保存する「記憶の書庫」だった。
だがその書庫を開いた者は、必ず“自らの記憶”を代償に差し出すことになる――。

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