「氷壁の座標 ― 失われた緯度経度と円環の真実」
第一節 消えた二つの数字
1937年、英領調査隊の地図記録から二つの座標が忽然と消えた。
それは南極大陸の「氷壁」の端部に記されていた、緯度と経度の組み合わせだった。
しかし、公式報告書にはその存在すら抹消され、調査員たちの証言は矛盾を抱えたまま封印された。
記録を知る者はこう語る。
「そこは白の果てではなく、門だった。」

第二節 円環の秘密
南極を囲む氷壁は、単なる自然の造形物ではない。
古代の伝承では「白き縁」と呼ばれ、世界を閉じ込めるための境界の輪として描かれてきた。
円環の正体を探ろうとする者は歴史の影に消え、地図上からも座標が切り取られた。
霧の盟約は、その座標にこそ「外界への出口」があると信じていた。
しかし、出口とは「外の宇宙」ではなく――「この世界の設計図そのものの裏側」だった。

第三節 姿を消した記録者
1961年、アルゼンチンの港町で、一冊の航海日誌が闇市場に現れた。
そこには「失われた座標」が墨で走り書きされていたが、購入者は記録を公開する前に行方不明となった。
同じ運命は、その後も繰り返される。

緯度と経度を書き残した者は、必ず消息を絶つ。
まるで“円環そのもの”が、人間の記憶から座標を抹消しようとするかのように。

第四節 円の外側
近年の人工衛星画像には、わずかな“黒い影”が氷壁の縁に映り込んでいる。
それは自然の影とは思えず、むしろ「境界の裂け目」のように見える。
だが公式の研究機関は一様に「光学的誤差」と結論づけ、解析を拒んでいる。
霧の盟約の古文書には、こう記されていた。
「円は閉じてはいない。開かぬ門がある。そこを描けば、描いた者は世界から消える。」
第五節 次回への繋ぎ
消えた座標。氷壁の門。
そして「白き円環」に隠された設計の裏側。
――もし我々がその真実を知ってしまったとき、
世界地図そのものが意味を失うかもしれない。
次回、
「失われた地図の裏面 ― 空白に刻まれた都市の影」。